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『汗』について知っておきたいことを、専門家の方に聞いてきました

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これから夏本番ですね。

2016年は観測史上最高の暑さになるとNASAが発表していたり、日本は猛暑になるというニュースも出ています。暑いの嫌だなぁ…。

夏といえば、汗。汗といえば、夏。汗は体温管理やにおいとの関係もあり、体のバランスを整えてくれるもの。だけど、健康のためにはただ汗をかけばいい、というわけではありません。汗やにおいを研究する医学博士・五味常明(ごみつねあき)先生は、人がかく汗には「良い汗」と「悪い汗」があると語っています。

「良い汗」はいくらかいても臭くない? 汗のかき方は子どものうちに決まる? などなど、健康のすべてに関わるといっても過言ではない、汗に隠された秘密や豆知識を専門家の方にお伺いしました。

現代人はなぜ汗をかかなくなった?

——先生が汗の専門家になったきっかけは何だったのでしょうか?

開業したのは30年ほど前です。当時は高度経済成長が終わって人々の生活は豊かになり、個人主義の時代へと変化していました。個室を与えられたり一人っ子が増えたりしたことで、人々は他人のにおいに敏感になり、体臭を否定するようになったのです。また、O-175など食中毒事件もあり清潔志向が進み、社会全体が「におい」を嫌うようになりました。

においを気にする社会になってきて、私は「自分がにおっている」という妄想を精神科で研究する一方、ワキガなどの原因がある場合は外科手術で解決していました。つまり、においの悩みには精神的な治療と外科的な治療の2通りの対処があったんです。そこで整形外科と精神科を組み合わせて心療外科と呼び、においの治療をしてきました。開業当時はにおいの専門家は他にいなかったのではないでしょうか。

そして、においは汗と密接な関係があります。汗をよくかくと当然においも強くなるので、汗の研究を始めました。

−—なぜ人間は汗をかくのですか?

汗をかく一番の目的は体温調節です。ほかの動物も舌を出したり、水浴びをしたりして体温を調節していますよね。体に熱がこもったときに汗をかいて気化熱を発散させ、体温を下げることが汗の役割です。

体のなかでも一番熱がこもりやすいのは脳なのですが、脳細胞は温度変化や熱にとても弱いんです。風邪をひいて体温が1〜2度上がっただけでも、頭がボーッとしてフラフラになってしまうのはそのため。そこで人間は、体温の上昇を抑え、脳を守るために汗をかくよう進化しました。人間の平熱である36〜37度というのは、実は脳にとって最適な温度なのです。

「良い汗」と「悪い汗」の違い

−—汗には「良い汗」と「悪い汗」があるとのことですが。

汗の原料が血液なのはご存知ですか?

汗腺は血液中の水分やナトリウム、マグネシウムなどのミネラルを取り込み、汗として分泌します。これらの成分は汗腺でろ過され再び体内に吸収され、再吸収されたミネラルは代謝などに使われます。汗を分泌することのみが汗腺の機能だと思われがちですが、この循環こそが汗腺の大事な役割なのです。

しかし、緊張して「急にドッと出る汗」などは循環が追いつかないため、代謝に必要なミネラルが放出されてしまいます。そのうえ、乳酸やアンモニアなど匂いのもとになる成分もたくさん含まれているため、ベタベタした濃度の濃い臭い汗になってしまう。これが「悪い汗」です。

悪い汗はただ臭いだけでなく、代謝に必要なミネラルが失われてしまうので、悪い汗ばかりかいていると、かえって太りやすい体質になってしまいます。

——悪い汗が出る原因はなんですか?

運動不足の人は汗腺が弱く、循環させる機能が弱いので悪い汗になってしまいがちです。ですから、よく運動をしているスポーツ選手よりも、事務仕事をしている人の方が、汗が臭いんですよ。

太っている人は「汗かき」の印象がありますが、太っている人は汗腺の機能とは別に、脂肪による要因が大きいです。脂肪は断熱材の機能を果たすので、暑い時も熱が体内に溜まり体温は上がる一方。普通の体型の人は自然と熱が発散されていくんですが、太っている人は脂肪のおかげで熱が逃げず、体温を調節するために多くの汗を一度にドッとかかないといけません。これも先ほどと同様に、濃度の濃い悪い汗です。さらに太っている人は、少し動いただけでも熱が上がってしまい体がしんどくなるので、できれば動きたくないはず。動かないから太ってしまう、という悪循環に陥ってしまうんですね。

良い汗は体の自然治癒力を高めてくれる

——反対に、「良い汗」とはどのような汗ですか?

日本人の汗腺はおよそ300〜500万個あるのですが、汗をかく能動汗腺と休んでいる休眠汗腺の2種類があります。能動汗腺が多いと循環が良いので、汗も臭くなくサラサラしています。これが「良い汗」ですね。

能動汗腺の数は子どもの頃にどれくらい汗をかいたかによって変わってきます。赤ちゃんの頃からエアコンがある環境が当たり前ですと、能動汗腺はどんどん少なくなってしまいます。すると汗が上手にかけないため、熱が体内に溜まりやすくなってしまう。実は、これが近年熱中症の症状が増えている原因です。

汗腺機能は、運動に影響しています。スポーツ選手でも能動汗腺が足りないために熱中症になりやすく、トレーニングのメニューを調整しなくてはいけない人が増えているため、これは深刻な問題です。能動汗腺は大人になってから増やすことは難しいので、子どもの頃から外で遊ばせて汗をかかせることが大事です。

——良い汗をかくと、どんないいことがあるのでしょうか?

じっくり時間をかけて体を芯から温めてかいた汗は、必要最小限の汗なので大切なミネラルが喪失されません。水に近くサラサラしているので、舐めてもしょっぱくないのが特徴です。

こうした良い汗には、免疫グロブリンのIgAが含まれています。能動汗腺がうまく働かず夏に汗をかいていないと、冬に風邪を引きやすいのは、この免疫グロブリンがうまく分泌されないためではないかと私は考えています。

能動汗腺が衰えて汗のかけなくなった現代人にとっては、良い汗をかくことは体の自然治癒力が高めてくれる健康法の一種といえるでしょう。さらに良い汗をかくと、汗が皮脂と混ざり合って、肌をしっとりさせる美肌効果もあるんですよ。

半身浴や岩盤浴で良い汗がかける理由

——良い汗を出すためにはどうすればいいですか?

「におうからイヤ」といって汗をかかないと汗腺が少なくなって濃度の濃い悪い汗になり、ますます臭い汗になります。ですから日常生活のなかで、ドンドン汗をかいたほうがいいですね。

生活習慣によってはすぐに汗をかくことは難しいと思うので、私は積極的に汗をかく「汗腺トレーニング」を提唱しています。例えばシャワーだけではなく半身浴をしたり、岩盤浴に行くのも良いでしょう。特に岩盤浴は皮膚を急速に温めるのではなく、遠赤外線が身体の深部を温めるので、ゆっくりじっくり分泌される良い汗がかけます。また遠赤外線には殺菌作用もあるため、岩盤浴でかいた汗は洗い流さないほうが良いんですよ。

ただ、汗はかくだけではなく蒸発することで気化熱を下げます。例えば全身浴は汗が蒸発しないため、体温が下がらず熱がこもってしまうので注意してください。また、サウナに入っても、出たあとに冷水で表面(皮膚)を冷やしてしまうと、汗がかけず体内に熱がこもってしまうため、汗腺機能の面から見ると意味がありません。

冒頭に申し上げたように、脳のためには体内の熱を逃さないといけないのですが、熱を逃す唯一の方法が汗をかくことです。脳の機能を維持するために大切なのは頭寒足熱、あるいは頭寒内熱ともいえますね。内臓は37度だと実は寒いので、温めたほうが良いんです。内臓の温度を1℃上げると免疫力が30%アップするというデータもあります。ですから脳以外は温めて、脳だけは冷やす、ということを心がけてください。

手のひらやワキなど局所に汗をかきすぎる多汗症に悩む人は日々増えていますが、汗を「うまくかけない」ことはもっと重大な問題をもたらします。熱中症も脳障害の一種ですし、冷房病をはじめ、自律神経失調等さまざまな病気すべてが、汗のかき方に関係しているんですよ。

(成田幸久)

<編集部まとめ>
体の全機能を司る脳。その健康に密接な関係がある汗をかく習慣を身につけることで、体全体の機能維持につながるようです。
これから汗や匂いが気になるシーズンがやってきますが、五味先生によると、汗臭さを回避するためには日常的に汗をかくことが必要とのこと。まずは、汗をかいたからといってシャワーでさっと流してしまうのではなく、ゆっくり湯船に浸かることからはじめてみてはいかがでしょう。

五味常明プロフィール
五味クリニック院長(http://www.gomiclinic.com/index.html)、日本心療外科研究会代表。体臭・多汗研究所所長。医学博士。流通経済大学 スポーツ健康学部 客員教授。一ツ橋大学商学部、昭和大学医学部卒業。昭和大学形成外科等で形成外科学、および多摩病院精神科等で精神医学を専攻。患者の心のケアを基本にしながら外科的手法を組み合わせる「心療外科」を新しい医学分野として提唱。ワキガ・体臭・多汗治療の現場で実践。わきがの治療法として、患者が手術結果を確認できる「直視下剥離法(五味法)」を確立。TVや雑誌でも活躍中。99年からは、ケアマネージャー(介護支援専門員)として、デイケア事業や、高齢者介護の現場でのにおいのケアにも取り組む。

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